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トートの散策日記。 偽島(1293)メインにいろいろです。
Posted by - 2024.05.19,Sun
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Posted by かの(トト) - 2008.06.27,Fri

toto_fl_rain.jpgしとしと。島にも梅雨の時期がきました。
草も木も土も、みんなにじんでいつもとは違う匂いがします。
トトはまだ通ったことのない獣道を歩いてみることにしました。
木から滑り降りた水滴がトトをずぶ濡れにしてしまいます。
しばらく行くと同じようにずぶ濡れの浴衣の女の子がいました。

「なあに、あなた。そんなに雨に濡れて嬉しそうに。ばかみたい」

からから笑った女の子に、トトも言い返します。

「君もぼくとお揃いだね」

女の子はぽかんと口をあけて呆れます。
ばかにしてるのに、とひとりごと。

「君もひとりきり?ぼくと一緒に行く?」
「ばかにしないでよ。あたしはひとりじゃないわ。沢山友達がいるの」
「そうなんだ?」
「あんたがどーーーーーーしてもっていうなら、一緒に行ってあげるわよ」

トトがうん、お願い!と言うと、女の子はにんまりと笑いました。

「しょうがないわね。ちゃんとついてきなさいよ」

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

二人はしばらく一緒に歩きました。
女の子はトトのお菓子作りの話に興味をもったらしく、熱心に聞いていました。
やがて雨粒が少なくなってきたとき、女の子は言いました。

「もうすぐ、帰らなくてはいけないの」
「家は遠いの?」
「おうちはないわ。消えちゃうもの。また生まれたときには、違うあたしになるの」

女の子は悲しそうに目を伏せました。
しとしと降る雨がだんだん途切れ途切れになります。
雨雲が重い足取りで空を歩き、青い色が段々見えてきました。

「じゃあ、ここでまた友達になればいいね」

トトが笑って言うと、女の子も笑いました。

「やっぱりあなた、ばかみたい。でも教えてあげる。あたしの名前ね、つゆっていうのよ」

最後にひとつぶだけ、雫が落ちてきました。
もう、女の子の姿はありません。
久しぶりに顔をのぞかせた青空が広がっていました。




梅雨が明けます。

[43回日記より] 

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